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医院の特徴

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1.どのような疾患を扱っているのか

不安障害、気分障害、統合失調症、身体表現性障害、解離障害、摂食障害、パーソナリティ障害、 そして発達障害(ADHDや自閉症スペクトラム)の患者さんの受診が多く、 脳波やMRIといった特殊な検査を必要とする不眠症、認知症、 そして時に入院治療を必要とするアルコール依存症の経験は多くはありません。

不安障害やうつ病や統合失調症は勿論のこと、不登校の小学生から高校生、 リストカットに苦しむ若い女性、過食嘔吐から抜け出せないでいる女性、 感情のコントロールに苦しむパーソナリティ障害はこれまで多くの臨床経験があります。

詳しいことは「精神科読本」 で述べてありますのでご参照ください。


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2.一般精神医学とは

1980年に米国精神医学会から『精神疾患の診断・統計マニュアルDSM-Ⅲ』が出版されました。

それまでの我が国の精神医療は、ドイツ語交じりの伝統的精神医学が主流で、 精神疾患を症状のみならず症状を産み出す病前性格や環境要因そして体質的要因(遺伝)といった 立体的な視点から理解しようとしていました。
ところがDSM-Ⅲ以来、症状の有無を中心とした診断・治療が発展し、 薬物治療を併用した精神科医による通院精神療法が一般精神医学になりました。

もちろん、各種の精神療法、家族療法、デイケアなどの治療法も発展してきましたが、 何れもコストパフォーマンスが悪く、主流にはなっていません。


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3.精神分析を応用した臨床とは

精神分析は今から120年ほど前にウィーンの精神科医フロイトによって神経症の治療として編み出されました。

自由連想といって患者に頭に思い浮かぶままに話をさせていくと、 原因となる心理的葛藤が明らかになり、症状から自由になるという治療法です 1回の面接に50分、それを週に数回行います。

精神分析は時間と料金が嵩みます。一方、名医は一を聞いて十を知ることができます。 一目見て、少しの間話を聞いて診断・治療を行っていきます。 残念ながら私は、未だその域に達しておりません。

あと何年仕事ができるかはわかりませんが、これまで同様、困っていることを訊ねて、生い立ちや人となり、 さらには環境との兼ね合いから理解していきます。

こころの病を、先の精神分析を応用して、力動的に理解しようとするので力動的精神医療と特別に呼びます。 欠点は時間がかかることですが、利点は誤診が少なく柔軟性に富んでいるので、 治療の内容は時間とともに深化していきます。


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4.川谷医院の他院と違うところは

先に述べましたように、 伝統的な精神医学とDSM精神医学と精神分析学をマトリックスとする精神医学を中心に行うので、 精神科医による薬物治療を併用するマネージメントを中心とする診察と、 症例によっては臨床心理士による心理療法(カウンセリング)、になります。
加えて、看護師による点滴・注射などの際の人による治療を重視しています。

また、2015年より当院を受診している患者さんを「就労継続支援A型 ドンマイ」 に雇用し、仕事の場を提供しています。


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5.精神科のカウンセリングとは

カウンセリングとは相談者に専門的な知識と技術で相談に乗ることだと定義すると、 精神科の場合、精神疾患に罹患したことで被る障碍の原因や克服のために専門家によって行なわれる対話による援助と考えてよいかと思います。

当院ではその援助を精神分析的に行ないます。精神分析とは3で説明しましたように、 神経症の治療のために最初に編み出されたカウンセリングです。 その後、精神分析の欠点を補う過程で行動療法が生まれ、 現在では認知行動療法も盛んに行なわれるようになりました。

当院では臨床経験を積んだ臨床心理士(常勤2人、非常勤7人)が担当します。

週に1回50分、料金は3000円です。 勿論、主治医によるマネージメントを中心とする診察も並行して行なわれます。 このような治療形態をアメリカではスプリット治療と呼んでいます。


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6.話すことでなぜ病気が治るのか

誰しも話すことで気持ちがすっきりした経験があるでしょう。 それは専門的にはカタルシス(浄化作用)と言います。

居酒屋で酒を酌み交わしながらワイワイやるのも、井戸端会議や女子会で駄弁るのもストレス発散になるし、 明日への活力になることを想像するとよいでしょう。 そして、話を批判なく中立的に聞いてもらうことでセラピストに警戒沁が薄れ、信頼感と安心感が芽生えます。

この基本的信頼感をもとにセラピストとの共同作業の過程で自分のこころのクセや隠されていた無意識の葛藤が明らかになっていきます。 すなわち、縛られていた心が自由になっていくのです。

環境や自分の本能欲求と折り合いをつけることに無理を強いていたこころのクセに気づくことで、 それまでとは違った「生きなおし」の過程を経験することが可能になるのです。 これが話をすることで病気が治ることに繋がるのです。

精神科の多くの病気は、 過去の重要な人物との関係で生じた葛藤や悩みの解決の仕方(性格特性)に偏りと硬さが生じた結果、 思春期以降の新たな対人関係で変更を求められるときに発症することが多いからです。

すなわち、カウンセリング(心理療法)はそれまでとはちょっと違った生き方のヒントや勇気を得ることができるのです。 症状はクスリで改善しますが、症状を産みだす性格特性や環境との折り合いの仕方はクスリでは変えることができません。 なので対話による治療は時間を要しますが、根気よく続けることで、新しい生き方が身につくのです。


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7.「生きなおし」の精神療法とは

「生きなおし」とは作家大江健三郎の講演から借りた言葉です。(2003年日本精神神経学会総会特別講演) 彼は人生の危機を「この苦しい体験を小説に書く、もう一度体験しなおすようにして検討してみなければ、 自分がこれから生き続けていくための体勢をととのえることができない」と語り、 小説を書くという営みの中に過去とは違う人生を求めました。

この考えは、私と患者さんとの治療関係(精神分析的には転移と言います)の中で、 私と共に凍結されていた心の中の対象関係を生きなおす、という私の治療観に一致したので、 採用することにしました。

精神分析療法との違いは以下の点にある。
①カウチは使用しません。
②自由連想は行いません。
③無意識過程を重視するのは共通しますが、 分析治療では患者の無意識に根ざすものを分析するのに対して、患者さんと共に彼の精神的危機を体験し、 それを転移のなかで生きなおすこと、を重視します。
④セッションは10分から15分程度の短時間。
⑤環境への介入は転移の文脈で行います。
解釈はその過程を進めるのに欠かせないが治療的には中心的役割は担わないことが多い。
短時間の一般精神科診察の中で行われるので、コストパフォーマンスに優れたものだと思っています。

ウィニコットは、精神病理の発生は環境側の失敗にあり、新たに「ほどよい環境」が提供されると、 つまり治療的退行を通じて、その凍結された失敗状況が解凍される可能性があると考えました。

バリントはそれを「新規蒔き直しnew biginning」と呼び、 いずれも分析することよりも共に生きなおすことを重視する治療姿勢で筆者の生きなおしを重視する「通院精神療法」もその流れにあると考えています。


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8.病前性格の未熟化

病前性格とは病気をする前のパーソナリティ特性のことです。 今日では、この病前性格の未熟化が起こり、薬物治療だけではなかなか治らなくなっているのです。

未熟化とは、もとの生物学的素因が個体の成長過程で柔軟性を失い、 ある環境(A)下では適応的だが別の環境(B)下では不適応を起こすスプリッティング現象が観察されることをいいます。 巷で新型うつ病と診断される若者を想像するとよいでしょう。

スプリッティングとは、AとBの環境における患者さんの姿に連続性がなく、 状況によって目まぐるしく変化する姿のことです。

このスプリッティングの理解がないと、彼の周りのある人は彼のことを可哀想だと同情し、 別の人は根性がないと蔑視するといった両極端の評価に分かれるのです。

ところでこの病前性格の未熟化はどのようにして起きたのでしょうか。 もともとの気質(素因)は変わらないのに、両親の離婚、虐待や夫婦間の不和による家庭内緊張、 学校でのいじめの問題、思春期の成長過程で他者とぶつかり合う経験の欠如、 といった環境側の問題が発生して未熟化が起きたと私は考えています。

その中で強調したいのは、10歳の自我の芽生えの頃のいじめや転校による学校不適応です。

この時期の社会からのドロップアウトは子どものこころに恥と劣等感を植え付けると同時に、 空想世界にその万能感の住処を求めることになります。 さらに、いじめや不登校によって教育の場を失うと、 自分がどれほどの者か分からないまま身体だけ成長していくといった歪な発達を遂げることになります。

病前性格の未熟化、つまり性格が柔軟性にかけ不適応をもたらし、 かつ重大な機能的障害もしくは主体的苦悩を引き起こした状態がパーソナリティの未熟化なのです。


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9.「生きなおし」の治療では病前性格に変化が生じる。

それを新型うつ病の患者さんの例で説明しましょう。

「生きなおし」とは、復職が近まると状態が悪化することを私と一緒に解決していく共同作業になります。 そのためには患者さんの病前性格の未熟化過程を詳しく知る作業が必要になります。

通常、患者さんの生い立ちや人となり、 そして私との治療関係のなかで患者さんの心のなかの対象関係が明らかになると、 ある状況(A)では元気なのに別の状況(B)ではうつ状態に陥るパーソナリティ構造がハッキリしてきます。

患者さんは、他者との間でよい関係だけを求め悪い関係は回避あるいは切り捨てる、 と言った部分的関係を繰り返し、 よい関係も悪い関係もある全体的な関係を経験しないまま生活してきたことに気づきます。

ここまで治療が進むと、何故このような生き方になったのか、 これからはどのような生き方ができるのかを模索していく過程で「生きなおし」を可能にするのです。


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